菊といえば陶淵明なのだ。
<菊を採る東籬の下、
悠然として南山を見る>
高校時代生意気にも口ずさんでいた<飲酒>という詩である。
ちなみに全文は、
飲酒詩 陶淵明
結盧在人境 而無車馬喧
問君何能爾 心遠地自偏
採菊東籬下 悠然見南山
山氣日夕佳 飛鳥相與還
此還有真意 欲辨已忘言
廬を結んで人境にあり、
しかも車馬の喧しきなし
君に問うなんぞ能くしかると。
心遠くして地おのずから偏なればなり。
菊を採る東籬の下、
悠然として南山を見る。
山気日夕佳なり、
飛鳥あいともに帰る。
此の中に真意あり、
弁ぜんと欲して已に言を忘る。
(吉川幸次郎訳)
この最期の一句、
<弁ぜんと欲して已に言を忘る>
なども実に頻用に値する絶唱である。
というようなことはともかく、菊は実に秋の花の代表であろう。
華やかさよりも渋み、そして、ひとつひとつはひっそりと咲くのだが
集って咲いた風情は香り起つ音楽である。
まさに日本人の心意気そのままではないか~!
陶淵明はその高潔な気概と世に入れられぬ隠遁の気分を菊に見出したのだが、そのメンタリティはむしろわが国に面々と伝えられているのであった。
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